一般的に、「税理士」と言ったとき、どんな職業で、どんな仕事をしているか、想像がつきますでしょうか。
私が税理士試験に真剣に取り組み始めた頃、正直、税理士ってどんな仕事なのか、まったく知りませんでした。(なぜ税理士になってしまったか、という秘密は、Blogでどうぞ。)時間が経つにつれ、専門学校で得た知識をもとに、バイト先の顧問税理士さんの指導に従って、日々の会社の伝票を入力し、決算を組むお手伝いをしてみて、「税理士さんって、会社の決算をやってくれる人なんだ」という漠然とした認識ができました。まだまだ、その決算をもとに、法人税の申告書を作ってることは分かっても、どうやったら申告書が作れるのかも分からなければ、申告書を読んで理解することもできなかった頃のことです。
思うのです。おそらく、この頃の私の「税理士さん」という漠たる印象、 これが、世の中で、広く一般的に認識されてる「税理士さん」なんじゃないかしら、と。
やがて、中規模な会計事務所に、確定申告時期のみのアルバイトに行くようになりました。その事務所では、たくさんの大学生のアルバイトがいて、確定申告書を作成する作業を、本当にきちんとした作業手順に基づいて、何人もの流れ作業で仕上げていく仕組みができていました。
その事務所での経験は、今までのバイト先でやっていた作業と、格段に異なるものでした。伝票入力ひとつとっても、作業のスピードや、求められる正確性、全てが違いました。「これが会計事務所なんだ・・・!」と、初めて出会う会計事務所に驚きました。そして、その事務所の税理士さんたちを見て、「会計事務所には、いろんな人がいるんだ」と知ったのも、衝撃的なことでした。
歳をとった先生もいれば、若い先生もいる。
個人商店さんを担当している人もいれば、
中規模な会社さんを担当してる人もいれば、
資産家さんを担当してる人もいる。
資格を持っている人もいれば、そうでない人もいる。
資格を志している人もいれば、そうでない人もいる。
いろいろな個性や立場の人が一体となって、その事務所がありました。
そして、そこにある分業体制をみて、会計事務所の専門性を学んだのです。
私は、本当にたくさんの種類のアルバイトを経験して、ようやく少しずつ、自分がどんなサービスを提供したいのかが分かってきました。
法人向けではなく、個人向けサービスだわ。
実は、一番最初のアルバイト先で、一般個人向けの接客業を学んだのですが、どうしても、その楽しさから抜け出せないのです。
「お客様と、心から向き合って仕事をするのが好きだわ」
素直に、その一念で、就職先の金融機関では、リテール業務を志望しました。
大きな組織では、多少の利益の度外視をしてでもサービスを提供できるときと、そうでないときがあって、それは私個人の努力など、本当に小さな存在でした。このことは、決して悲しむべきことではなく、私にとっては大いなる新発見でした。
大きな会社には、たくさんの利害関係人がいます。
個人株主であったり、親会社であったり、預金者であったり、取引先であったり、関係会社であったり。いろいろな立場の人が、いろいろな思惑をもって、大きな会社との関係を築いている中で、いかに自分が小さい存在であるかを知りました。大きな会社の社会的な責任などは、一度でも勤務しなければ理解できなかったことだと思います。
それが理解できたことが、今となっては糧になっています。
こうして、ほどなくして、会計業界に舞い戻りました。
再スタートの始まりは、当時は少人数の会計事務所。
毎日、和気藹々としたムードで、所長先生の「明るく楽しく元気よく」というコンセプトのもと、職業会計人として知っておかなければならない知識のほとんどを教えていただきました。
おそらく、ここでの経験がなかったら、私は独立して事務所を構えるアイディアなんて、一生湧かなかったかもしれません。
中小企業の会社の運営って、どうなっているのか。
世の中の社長さんたちが、どれだけ資金繰りに心を砕き、 法人税の納税が、どれだけ会社の資金を逼迫させるものなのか。
日本の法人のうち、95%以上が中小企業ということを知ったのは、もっともっと後日のことなのですが、このとき、「中小企業って、個人と同じなんだ」と知るのです。
そして、より、「中小企業は個人と同じ」という思いを強くさせてくれたのは、独立直前に勤務させていただいたタクトコンサルティングです。
タクトコンサルティングは、資産税に強いといわれる、大きな会計事務所です。
「資産税ってなんだろう」と思いながら、内容を理解していないまま入社し、入社直後、いきなり不動産M&Aのお仕事をさせていただきました。
学問の上で、法人は、その継続性において、個人とは違う存在なんだと学んでいました。 法人は、個人と違って死なないから、終わらない、と思っていたのです。 しかし、大間違いです。
「中小企業は個人と同じ」だったのです。 多少、個人より長生きするようにも思いますが、それは成功した一握りの会社さんに限定した話なんだということを、はっきり認識させられました。
そして、一個人が亡くなられて、相続という場面を迎えるときに、相続人が遺産相続で頭を悩ませることと同じように、法人には、法人なりの出口があるんだ、と知ったのです。
タクトコンサルティングで学んだことは、あまりにも多すぎて、簡単には書ききれません。
ただ、ひとつだけ、ここに書くとするなら
日ごろの風邪にかかったときにかかる町中の内科医さんと 最期を迎える病院が、おおきな病院である違いがあるように 自分の抱えている症状に応じて、複数の税理士さんを使い分けていい
ということです。
毎年の決算を頼む税理士さんと、万が一の場面で頼む税理士さんは お医者さんを使い分けるように、使い分けていいのです。
そもそも、どうして、税理士さんは、自分の診療分野を掲示しないのかなあ、と思います。お医者さんみたいに、看板に書いてあったら、分かりやすいですよね。捻挫かな、と、思ったら、いつもの内科のお医者さんのところに行くよりも、外科や形成外科の先生のところに行くのが自然です。
だから、私は書いておこうと思います。
得意分野は、相続に関するご相談です。
実際に、相続がおきてからのご相談でも構いませんし、事前準備のご相談でも大丈夫です。不動産がある場合、会社がある場合、婚姻外のお子様がおられる場合、相続人の中に日本国籍でない方がおられる場合…さまざまなケースがあります。また、相続にともなって、相続税の心配がある場合、ない場合の両方がありますが、そのどちらのケースでも構いません。一度でも、相続をご経験になった方なら、相続手続きの煩わしさは、よくご存知のはずです。大事な奥様、ご主人様、お子様のためにも、「相続をラクにしておく」という宿題をやっておくか、やらないでいるか、迷ってしまう…そんなときには、どうぞお気軽にご相談にいらしてください。日ごろ相談に乗ってくれている金融機関の担当者さんに、匙を投げられた相続のお話こそ、ぜひご相談いただきたいのです。
一度お電話いただき、時間さえお約束させていただければ、土日でも、平日の夜でも構いません。
と、いうわけで、将来、事務所のスタッフが増えて、ほかの分野を得意とする税理士さんが登場するまでは、阿部事務所の診療科目は「相続に関するご相談」です。
すっかり長くなってしまったのは、普通の平易な言葉で 事務所のご紹介をさせていただきかったから、です。
相続問題は、難しい言葉を駆使して解決する話ではありません。
それが、阿部事務所のコンセプトです。